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DCFについて(前半)


標準的な加重平均資本コスト(WACC)の値について考える
WACCとは、株主資本コストと負債資本コストを、
その会社の(時価ベースの)資本構成にしたがって、
加重平均したものである


以下、
純負債(ND)が0
EBIT成長率が0
税率40%の会社を仮定する

EBITが100で不変とすれば、
運転資本(WC)の増減も毎年0、
設備投資(CAPEX)と減価償却(DEP)が同額なら、
FCFは毎年60で一定となる

ところで、FCFは、
FCF=EBIT(1-税率)+DEP-CAPEX-WC増分
により算出され、
その現在価値総和がその会社のEVを与える

したがって、このような0成長企業のDCFによるEVは、
初項が60、公比が1/(1+WACC)の等比級数の総和であるから、
-1<公比<1より、S=初項/1-公比として算出できる

そこで、このワークシートは、
ダウンロード(xls) 
ゼロ成長の会社のEBIT倍率として適当な、
6~10の範囲で変化させ、
その倍率から求められる時価総額と、
先に計算した4~14%までのWACCを用いて
DCFで計算される時価総額の乖離を%表示したものである

すでに述べたように、スタンドアロンのDCF株主価値は、
一般に時価総額の20~30%増しと言われている
この範囲に入るWACCの値を黒でシェイドをかけてハイライトしている

このモデルはゼロ成長の会社のFCFを
かなり簡略化して計算しているが、
実際のDCFで用いるFCFの計算もこれと大差ない

つまり、ゼロ成長の会社にEBIT倍率8倍を与えるような
平穏状態の資本市場では、
安定収益で非常に低成長率の会社のWACCは、
概ね一桁の中央(6%)付近であることが演繹的に類推される


次回はDCFについて(後半)


参考文献
Valuation: Measuring And Managing The Value Of Companies (Wiley Finance) 
M&A最強の選択

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利益倍率法の限界について


利益倍率法の限界とは、
資本構成の違いによって、
利益成長率の高い企業の方が、
低い企業よりも低くなることがある
というものである

以下に、数値例を挙げる

ある事業を100%自己資本で遂行する企業Aと
同じ事業を相対的に少ない自己資本に加え、
借入金500億円(金利5%)で遂行する会社をBと置く
両社の営業利益を100、純利益を60とし、
予想営業利益成長率を20%、
税率は40%と仮定する

以上より、
A社は金利払いがないので、純利益の成長率も20%となるのに対し、
B社の純利益は金利払い分の25*(1-0.4)=15だけ減少し45→57となり、
純利益成長率は27%となる

すなわち、
利払い増加によって毎年の予想純利益は一定金額減少するため、
借入金増加によって予想純利益の絶対額は必ず減少するが、
予想純利益成長率は必ず上昇する
一方、AとBの予想営業利益成長率は
(金利負担以外は全く同一なので)同じである

したがって、
利益倍率が利益成長率で決まるとすれば、
AとBの営業利益倍率は同じでなければならない
これを仮に10倍とすると、
両社の会社総価値は1000ということになる

しかし、
株主価値の観点から考えると、
A社は1000であるのに対し、
B社は純負債500を差し引いて、500となる

つまり、
AのPERが1000/60=16.7(倍)であるのに対し、
BのPERは500/45=11.1(倍)となり、ここに矛盾が生じる
純利益の成長率はBの方が高いのに
結果は逆にBのPERの方が低くなっている
これが利益倍率法の解決しがたい矛盾である


利益倍率法は、本質的に近似法であり、簡便法であるが、
実務的にはその使い勝手の良さから非常に多用される手法であり、
そもそも、株価ひとつでも1日の中で乱高下する場合もあるわけで、
誤差を含むことが前提の企業価値評価においては、
その矛盾と誤差を理解して使用する限り、
十分に実用に耐える
有用な評価手法であると言える


次回はいよいよ、DCFについて


参考文献
M&A最強の選択
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標準的な利益倍率について

今回は、利益倍率の常識、あるいはベンチマークと言える数値を
以下に検討していく


ゼロ成長(あるいはゼロに近い非常に低率の成長)の会社の
PER(Price Earnings Ratio)を想定する必要がある
これは、最近の日本や米国の株式市場では
概ね10倍程度である、10倍のPERとは、
その会社の株式を保有することで投資家が要求する利回りが
10%であることを意味する

この数字の妥当性を示すのに、CAPM理論を持ち出せば、
株主資本コスト=リスクフリーレート+β*リスクプレミアム

リスク・フリーレートを米国長期国債利回りとして5%
比較的リスクの低いゼロ成長株式なので、β=0.7%
株式投資に求めるリスクプレミアムを7%

以上のように仮定すれば、
株主の要求リターンは、5+0.7*7=9.9となり、
10倍のPERはそれほど唐突な数字とは言えないだろう


同様に仮定を置いていくと、
高成長(年率30%で5年間、つまり5年後に利益が
3.7倍になることを想定する)企業のPERは、せいぜい30倍、
EBITDA倍率は11~12倍ということになる

例外として、これを越えるPERやEBITDA倍率が観測される場合もあるが、
それはゼロ成長PERが10倍を大きく上回る場合か、
特殊な高成長ベンチャー企業で別の価値評価モデルが必要な場合である


通常の株式市場、通常の成長モデルの会社の利益倍率は、

PERで10~30倍
EBITDAで4~11.5倍
の範囲に、概ね入っていると考えて間違いはない


次回は利益倍率法の限界について


参考文献
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