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利益倍率法の限界について


利益倍率法の限界とは、
資本構成の違いによって、
利益成長率の高い企業の方が、
低い企業よりも低くなることがある
というものである

以下に、数値例を挙げる

ある事業を100%自己資本で遂行する企業Aと
同じ事業を相対的に少ない自己資本に加え、
借入金500億円(金利5%)で遂行する会社をBと置く
両社の営業利益を100、純利益を60とし、
予想営業利益成長率を20%、
税率は40%と仮定する

以上より、
A社は金利払いがないので、純利益の成長率も20%となるのに対し、
B社の純利益は金利払い分の25*(1-0.4)=15だけ減少し45→57となり、
純利益成長率は27%となる

すなわち、
利払い増加によって毎年の予想純利益は一定金額減少するため、
借入金増加によって予想純利益の絶対額は必ず減少するが、
予想純利益成長率は必ず上昇する
一方、AとBの予想営業利益成長率は
(金利負担以外は全く同一なので)同じである

したがって、
利益倍率が利益成長率で決まるとすれば、
AとBの営業利益倍率は同じでなければならない
これを仮に10倍とすると、
両社の会社総価値は1000ということになる

しかし、
株主価値の観点から考えると、
A社は1000であるのに対し、
B社は純負債500を差し引いて、500となる

つまり、
AのPERが1000/60=16.7(倍)であるのに対し、
BのPERは500/45=11.1(倍)となり、ここに矛盾が生じる
純利益の成長率はBの方が高いのに
結果は逆にBのPERの方が低くなっている
これが利益倍率法の解決しがたい矛盾である


利益倍率法は、本質的に近似法であり、簡便法であるが、
実務的にはその使い勝手の良さから非常に多用される手法であり、
そもそも、株価ひとつでも1日の中で乱高下する場合もあるわけで、
誤差を含むことが前提の企業価値評価においては、
その矛盾と誤差を理解して使用する限り、
十分に実用に耐える
有用な評価手法であると言える


次回はいよいよ、DCFについて


参考文献
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